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オススメ!収納付き直階段の造り方・・現場施工までにやるべきこと

こんにちは、代表の坂本です。

これまで階段について、種類や計画する上でのコツなどお話してきました。

そこで今回は、実際にプランされた建築家T様自邸の収納付き階段がどのように造られていくのか、設計図から注意するべき点を読み解き、どのように現場施工されていくのか、まずは現場へ搬入されるまでの流れを設計図、施工図をもとにお話しさせていただきます。

専門的な言葉が多く出てきますので、プロ目線でのブログとなりますが、皆さんに少しはお役にたてればと思います。

今回の施工事例 収納付き直階段

 

まずは概要、仕様の説明から

今回の階段はLDKにあるキッチンに面する直階段です。直階段の下のスペースを有効利用し、食器、家電、冷蔵庫置場とする仕様となっております。

仕様は次の通りです。

◯木製直階段

踏板、蹴込板:ゴム集成材 オスモラピッドフロアー塗り

ササラ桁      :ゴム集成材 無塗装

◯収納棚

棚板    :ポリ合板

家電収納棚板:メラミン化粧合板

◯造作木製建具

引込戸 冷蔵庫置場:ポリ合板 垂直収納用金物

開き戸 収納扉  :ポリ合板 モノフラットリンクスヒンジ

 

設計図からどこに注意するべきかを読み解く

仕様を確認したところで、次に設計図から注意するポイントを考えていきます。

T様からの設計図は細かく描かれていますが、そのまま階段及び収納ができるかというとそうではないのです。

階段断面設計図

 

まずは、どこに注意が必要か、どのように綺麗にみせるか、おさめるかを設計図から読み解いていきます。

設計図に注意するべきポイントをピックアップしましたので、具体的に解説していきます。

階段展開設計図

階段平面設計図

 

あ:階段を建物本体にどのように固定するのか

い:階段の段鼻の仕口、小口のおさめかたをどうするのか、収納建具とのちりをどうするか

う:収納建具の種類が異なるので、階段の踏板、蹴込板とのすき間(クリアランス)を統一できるものか

え:階段4段目まで下部が造作壁になっているため、階段小口とのちり、収納建具とのちりをどうするか

お:特殊な収納建具金物を使用するので、おさめかたをどうするか

 

これらのことを考慮して、いよいよ施工図を描いていきます。

 

設計図から施工図を描いておさまり検討、施工図の重要性

施工図とは、設計図に現れていない細かいおさまりを表現し、寸法を確認確定し、現場の職人さんが問題なく造り込んでいくために必要なものです。

難しいおさまりのあるところ、注意するべきところを事前にチェックしておき、必要に応じて描いていくことになります。

では、施工図をどのように描いているのかを解説していきます。

階段の断面詳細図と階段下平面、断面詳細図を作図しました。注意するポイント㋐~㋔を拡大図にして順番に示します。

階段断面図 施工図

階段下平面、断面詳細 施工図 

㋐詳細図

㋐:階段の踏板、蹴込板の細かい加工寸法を記載、ササラ桁の位置、固定位置を確認できます。ここでは最上段部分の上段框のおさまりも検討しておく。

㋑詳細図

㋑:階段の小口部分、下部収納扉との関係など、階段巾を決定するのに必要なおさまり検討をしておく。階段とのちり(段差のこと)を1.5mmとなるように収納建具位置を決めた。

㋒詳細図

㋒:階段下収納扉の位置が決まったところで、次は、階段と建具とのすき間を検討。今回の一番重要なポイント。階段とのすき間、壁とのすき間、建具どうしのすき間が共通して3mmとなるように検討した。

㋓詳細図

㋓:階段板とはイ図で1.5mmチリで壁、建具をおさめる検討をした。次に壁と建具を同面にするためにインセット丁番を使うことにした。

㋔詳細図

㋔:収納扉の建具金物について検討。モノフラットヒンジ、スライド丁番のかぶせ、インセットと3種類の建具金物が必要なことがわかり、詳細図も含めて検討。特に取付部分の木枠下地材の寸法を金物がおさまる寸法となるように検討が必要。

 

建具金物にはいろんな種類があり、メーカーサイトからの詳しい承認図、CADデーターをもとに施工図検討を行います。

下記はモノフラットヒンジの施工要領書の一部参考例、使用する金物についても徹底して調べます。

モノフラットリンクスヒンジ:スガツネHPより

https://search.sugatsune.co.jp/product/g/gLIN-X600/

取扱説明欄からPDFダウンロードできます

 

設計図から施工図をどのように描いていくかを説明してきました。

施工図はあくまでも現場へ搬入するまでに検討しておく材料みたいなもので、これらの材料がないと現場ではどのような下地をしておくのか不明で工事が進みません。

階段は取付用の梁の位置、柱の位置などプレカット(構造体)に影響してきますので、早期に検討しておく必要があります。

現場は生き物、少しの施工誤差というのは度々あるものです。そんな誤差の修復対応もこういった施工図を用意しておけばどこで吸収するか迷いません。

施工図のないまま、思いつきのままで現場を進めると、途中で問題が発生し対応が遅れ、出戻り、やり直しなど余計な手間とコストがかかってきます。そのようなことがないように、事前に施工図を作成の上きっちり検討を行うことが必要です。

おわりに

注文住宅における階段はオリジナリティーが高いものが多く、一棟一棟お客さまの要望に応じて階段を造るようにしております。

階段ひとつとってもいろいろと細かいことを考えながら造っていくことで、おさまりが美しいいいモノができるのです。

今回は設計図から施工図の描き方についてお話してきました。

綺麗に仕上げられる裏側には、施工図を描いて検討を重ねている事前作業があるのです。

また何か気になることあれば、いつでもお気軽にご質問いただけたらと思います。

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